地域熱事業2

目次

おらってでは、太陽光発電を中心に事業を展開していますが、最近は小水力発電にも挑んでおり、再生可能エネルギーの発電事業に取り組んできました。しかし、暖房や、給湯など、家庭の消費エネルギーの約半分を占める熱エネルギーの脱炭素化にも取り組む必要があると考えています。日本は国土の3分の2が森林に覆われており、木質バイオマスは熱エネルギーをもたらす有効な再生可能エネルギーです。同じような問題を抱えておられる方々と認識の共有と解決への糸口が見つかればと考えています。

1.木質バイオマスの熱事業

1) 木質バイオマスの熱事業の意義

木質バイオマスの熱事業の意義として下に示す6つの事柄を挙げることができます。
  *CO2排出抑制による地球温暖化防止
  *地産地消のエネルギー生産
  *エネルギー購入費を地域内循環化
  *雇用創出効果が大きい
  *木質チップ利用による林業振興
  *森林保全

このうち、上から3つは、再エネに共通の事柄ですが、木質バイオマスの熱事業では、木質バイオマスを供給する仕組みを作って長期にわたって定常的に維持することが必要であり、このことが、その下の3つの事柄につながります。

2) 各種木質燃料の長所と短所

*薪:薪は最も容易に製造が可能で、初期費用が少ない。しかし、反対に、人力が主で、機械による大量生産とか、燃料の自動供給などが必要な大規模な燃焼施設には向かない。かつて、燃焼効率を上げにくい、とか、煙が多いなどの欠点が指摘されていたが、最近の欧州製の中・小型薪ボイラーでは、チップボイラーと同等の80%を超える燃焼効率になっている。しかし、火力の調整の自由度は低い。

*炭:燃料としては、エネルギー密度が高い、煙が出ない、火持ちが良いなどの長所があるほか、燃料以外にも、水の浄化、調湿、脱臭、土壌改良、生鮮果菜類の鮮度保持などの用途に使われています。炭は安定的に炭素を閉じ込めているので、そのまま埋めることによる炭素固定も注目されています。一方、炭の製造工程で、炭化水素が燃焼することなどによって、木炭では木の持つエネルギーの40%程度しか利用されません。また、燃料としての用途は、大規模なものは難しく、煮炊き用、火鉢などに限られています。

*チップ:比較的容易に製造が可能なため安価です。一方、エネルギー密度が低くチップ供給の際も詰まりやすく利用機器が複雑になるため、比較的大きな設備が必要になります。さらに、発酵による発熱で発火の恐れもあり、長期間の保管はできません。このため、チップ製造場所から近距離での大量消費に向いています。

*ペレット:火力の調整が容易で小型機器でも燃焼効率が良い。含水率も低くエネルギー密度が比較的高いため、比較的長期間の保管や長距離の輸送も可能です。一方、地域で間伐材などから製造すると、製造工程がやや複雑な事と大規模化ができないため、製造コストが比較的高くなっています。しかし、海外からは大規模機械化による安価なペレットが大量に木質バイオマス発電用として輸入されています。

3) 木質バイオマスを利用してエネルギー自立を目指す小さな村の取り組み

                        

2.おらっての木質バイオマス熱事業

 熱事業を行うためには、木質バイオマスを定常的に入手し、需要先の熱供給設備で使える条件(薪かチップかペレットか、乾燥土など)を満たした形で供給する必要があります。

1) 木質バイオマス燃料需要先について

 新潟市内の熱を大量に使う銭湯や病院など多くの施設をリストアップし、電話や現地訪問により、その業界の状況や現有ボイラーの状況などを調べ、問題なければ、月々の化石燃料費と消費量のデータ提供をお願いしました。その際、新潟市営温水プールについては、新潟市から温水プール管理者へデータ提供の依頼をしていただきました。
 木質バイオマスを燃料とするボイラーには、薪用、チップ用、ペレット用のものがあり、ペレットは含水率が凡そ決まっているのでペレット用ボイラーでは含水率については問題になりませんが、そのほかのボイラーでは、生木を燃料にできるものから含水率の制限が厳しいものまであります。おらってでは、チップが安価で近距離輸送・大量消費に向いていることから燃料としてはチップを選択し、ボイラーとしては、湿量基準の含水率((含まれる水分量/全体の重量)×100:以下では含水率とする)が30%程度との制限はありますが、燃焼効率が高く、トラブルが少なくスマホで見守ることができるという点で、徳島地域エネルギーでも使用しているETA社のチップボイラーが良いと考えています。
 ボイラー設備などの初期費用を、年間の化石燃料費と木質バイオマス燃料費の差額で割り、何年で償却できるかで算定される、採算性の分析は一般社団法人徳島地域エネルギーにお願いしました。最近の化石燃料価格高騰前の分析でも、新潟市の都市ガス価格がとても安かったにも拘らず(2023年11月調査で3~4割価格が上がっている)、燃料消費量が大きな4か所の温水プールでは、化石燃料から木質バイオマスへの転換が採算面で可能と判定されています。

2) 乾燥、運搬について

  原木(丸太)の含水率は50%を超えるものもありますが、これから含水率30%以下のチップにして定常的にチップボイラー施設に運搬する必要があります。木質バイオマスの利用が進んでいる県では、表2.に示すように、チップの含水率に応じた価格設定が行われ、少し価格が高くなりますが、低含水率のチップをチップボイラー施設で購入できるようになっています。しかし、新潟県、少なくとも新潟市周辺では、チップの乾燥は行われてないようです。木質バイオマスを乾燥する方法はいくつも提案されていますが、その内4つの方法について検討を行っています。

*コンテナ式乾燥システム:脱着式コンテナにチップを入れ熱風を供給してくれる施設で乾燥を行い、そのままボイラー設置施設まで運ぶことができます。(日比谷アメニスHP)コンテナは高額ですが、分割払い可能なら実現性があるように思います。

*ソーラードライシステム:建物の屋根に載せた集熱パネルで温めた温風で建物内部に貯めたチップを乾燥します。(日比谷アメニスHP)新潟では、冬は機能しないと思われますが、そのほかの季節だけで役に立つかは検討の余地があります。

*木質バイオマス保管・乾燥シート:通気性がよい一方防水性が高いシートをチップの山に被せることで、チップの発酵熱によってチップの乾燥が進みます。

 (日比谷アメニスHP)チップを積み上げておくある程度広い場所と積み上げるのに必要な重機(ブルドーザー)を必要とします。

*燃焼用丸太の天然乾燥における乾燥日数を推定するツール:国立研究開発法人 森林研究・整備機構で開発されたツールで、乾燥前の丸太の情報(含水率や直径、長さなど)、乾燥を開始する月、目標とする含水率、乾燥実施場所に近い地点のアメダスデータ(月ごとの気温と降水量)を入力することで、乾燥日数の推定値が求められます。

http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2019/documents/p28-29.pdf

日本海側のあわら市では、表2. に示すように、間伐材の原木の樹皮を剝いで1年以上自然乾燥しチップにすることで得た平均含水率26.8%のチップをホテルのボイラーの燃料にしています。新潟市でも自然乾燥の可能性があります。森林組合などは、このようなことに興味を持ったとしても、定常的な仕事に追われて協力はできないようです。

3) 木質バイオマス供給元

  新潟県での森林面積の割合は、全国平均のほぼ同じですが、新潟市では水田が広がっているためずっと低い値で、新潟市森林整備計画書 (令和4年4月1日変更) によると、わずかに7.5%とされています。このため、当初、新潟県で最も森林が豊富な村上市から供給してもらうことを企画しました。しかし、遠距離の運搬が必要になることや、地元での木質バイオマス利用計画があることから、新潟市や近隣からの調達を考え、以下の3つの供給元について検討しています。
    *西蒲区の間伐材
    *中央区の西海岸公園などの松枯れ木
    *南区などの果樹剪定枝 
  西蒲区の間伐材については、一般的に新潟市内からの多量の木質バイオマス供給が難しいと考えられている中で、可能性が指摘されています。実際に西蒲区で間伐を行っている業者は、新潟市の温水プールの中で最大の熱需要があるプールのチップ必要量650t/yを優に超える1000t/y程度なら供給することは全く問題ないと述べています。さらに、この地域に関係する森林組合も木質バイオマスの量については問題ないとの認識を持っている事を教えてくれました。しかし、問題はまだ残っています。それは、チップボイラーの耐用年数(15~20年とされる)にわたって間伐が継続されるか、さらに、間伐が行われたとしても間伐材が入手できるかという問題です。
  FIT制度の導入により、大規模な木質バイオマス発電所が日本各地に建てられ、国内ではチップ価格の高騰を招いている地域もあり、また、海外からの木質ペレット、PKS(パーム椰子殻)、パーム油の輸入が急増して環境破壊が指摘されています。さらに、大規模な木質バイオマス発電所では、木質バイオマスの持つエネルギーの30%程度しか使われていないことも問題です。最近、政府も大規模な木質バイオマス発電所については抑制の方向を示しており、おらってで行おうとしている地産地消型の木質バイオマス熱事業にとっては、木質バイオマス燃料(チップ)が得やすくなることが考えられますが、何れにせよ、何らかの恒常的な仕組みを作る必要があるように思います。

   中央区の西海岸公園などの松枯れ木は、令和2年度は1,100tも出たそうですが、減少傾向で年数十tとされる年もあります。西海岸公園などで野積みにされている松枯れ木 (写真1.) の中には、直径が50㎝を超えるものもあり、公園を散策する市民からも有効利用を求める声があがっているそうです。他県ではボイラーの燃料に使われている例もありますが、新潟県では、今のところボイラーの燃料には使われてないようです。西海岸公園の松枯れ木試料を頂き、徳島地域エネルギーでETA社のボイラーでチップの燃焼実験を行ったところ、燃料としての使用に問題ないことが示されましたが、松枯れ木の移動に制限があることや、使える松枯れ木の量が年度によって大きく変動することから、今のところ使用することが困難な状況です。
  南区などの果樹剪定枝は、新潟市の農林政策課では理論値として年に1,600t排出されているとのことです。このうち、まとまって太い剪定枝が排出される場合にはボイラーでの利用が考えられますが、そのほかの場合は、バイオ炭にした方がよい場合も多いように考えます。

    

3. 今後の課題

   新潟市も市営温水プールについては、遅かれ早かれ脱炭素化が必要と考えており、その方法として、おらってで現在検討している木質バイオマスボイラーの他に、もみ殻を燃焼するボイラーや、再生可能エネルギーの電気によるヒートポンプなどが考えられます。新潟県の特性を生かしたもみ殻の利用は、もっとも必要なことですが、利用されていない、あるいは処理に困っている木質バイオマスの有効利用も進めて、環境に配慮して全体として無理なく脱炭素を進める必要があると考えています。

                           (文責 佐藤高晴)

 

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