佐渡小水力発電プロジェクト

1 背景/離島の抱える問題と解決策 世界中に多く存在する離島の最も大きな課題は、農業以外に大きな地場産業がなく、よって若者の就職口が極端に少ないのが現状です。佐渡島では昭和35年の113,296人から平成22年62,727人までに人口が激減しました。近年は毎年確実に1,000人もの若い世代を中心とした人口が本土に流出しています。現在推定57,000人。さらに、本土と比べて割高な燃料物価が島民に重くのしかかり、人口流出に追い打ちをかけています。それは、化石エネルギーが離島にあたえる常に不利な環境・条件であり、打開策は化石エネルギーから脱却し、地域資源を利活用した再生可能エネルギー普及により、島民の負担軽減をはかることです。それと同時に、特色ある伝統文化を観光的に興行するのではなく、自分らのルーツ・文化を再考し自ら取込む努力を含めた、新しい島民のライフスタイルの創成であるとわたしたちは考えます。 2 新たな取組み われわれ、おらってにいがた市民エネルギー協議会は、今年8月に新潟市とパートナーシップ協力協定を締結し、新潟市の施設を利用して発電する市民エネルギーの先鞭をきりました。この市民エネルギーの流れは本事業実施地区の農家を主体とするコミュニティーに影響をおよぼしました。離島中山間の地域資源、水不足を解消するため、江戸時代の先人が手作業で掘り起こした溜池、しかも上下2連の溜池の落差を利用、昼間太陽光発電で揚げてエネルギーを蓄え落水して発電し、薪能/プロジェクション・マッピングで使用する新規性・意外性は、現地でも注目されています。さらに、売電収益で地域振興の活動を行い、このモデルを佐渡中に普及させたいと考えています。溜池の所有者の子息は前述薪能プロジェクション・マッピングイベントの主要メンバーで、父子ともこの新たな取組みに賛同いただき、溜池の使用、電力の能楽イベントでの使用、売電収益の使用方法にそれぞれご承認いただいています。 3 事業の内容 実施地は佐渡市羽茂本郷3325番地内(大草集落内)および羽茂小泊白山神社能舞台を予定しています。前者は小佐渡山地の丘陵の西端にあたり、大きな谷間に棚田が3枚あり、その上下に農業用の溜池が2つ存在します。この個人所有溜池を使用して、太陽光揚水ハイブリッド発電の実証を行い、展示を整備する計画です。発電が開始されたら、現地説明会を行い、自然環境を活用した発電事業への地元住民および島外からの来訪者に宣伝します。 大草集落に隣接する小泊集落では能舞台にて毎年10月薪能を実施している。大学との共催で薪能とプロジェクション・マッピングをコラボレーション(舞囃子と映像の同期)する新たな試みを開始しており、今年で2回目となりました。本事業にて発電した電力は、この薪能/プロジェクション・マッピングに使用する予定です。余剰電力は売電し、地域振興の数々のプロジェクトを実行していきます。 水力電力および太陽光余剰電力は電力会社に売電を行い(年間推定14.3万円及び8.7万円)、降水量が多く水力発電のみの期間(揚水が必要ない時期)は実施地直下にある、集落ふれあいセンターに電力を供給する予定です。売電収益年間額は年間推定23万円であり、額は少ないですが能楽普及、環境エネルギー体験学習講座活動費に充て、佐渡島の持続可能な地域活性のための実証モデルとしたいと考えています。 4 われわれの夢 佐渡島を再生エネルギーと伝統芸能の広大な野外展示場、廃校利用のミニコンベンションコンプレックス・展示場・国際見本市会場としたらどうでしょうか? デンマークのサムソ島は農民が中心となったコミュニティ再生可能エネルギーで100%電力独立しており、熱供給システムも完備して、全世界から環境、エネルギー、機械、建設関係者が見学に訪れています。同様に農業が主たる産業の佐渡島は、サムソ島にはない、世界無形文化遺産「能」と現存の33能舞台を武器に、サムソ島以上の集客を期待でき、おおきなコンベンション産業として発展することがわれわれの夢です。 トピックス ①   3月29日 おらって会員が現場視察を行いました。 ②   9月12日 ふたつのため池の測量調査を実施しました。その結果、上部ため池は標高244m、面積302.6m2、下部ため池の標高は228m、面積は421.6m2と判明しました。有効落差は16mです。 下部ため池 上部ため池